ラッキーとあいつと妻(3)
いずれにしてもラッキーがあいつと巡り合うことが出来たのは親切なお婆さんと心優しい爺さんの切ない暮らしがあったからだ。
お婆さんは大事そうに涙を拭いたタオルにラッキーの母親になる子犬を包んで帰って来た。
「おじいさん大変だよ子供が出来たよ」
「ええっ、何やて。子供、子供が出来たって!」
「そうよ可愛いんだから」
「お前、気は確かか?えらいこっちゃ、婆さんまでがボケたか」
おじいさんは糖尿病を患っており、最近足が痺れるときがある。リハビリにお婆さんは一緒にウォーキングしようと言うのに億劫がって布団に潜り込みテレビ三昧だが、爺さんはさすがに婆さんの様子が気になり曲がりかけた腰を伸ばすようにして頭だけ婆さんの方に向けた。ばあさんはいそいそと暖かい電気炬燵の中に子犬を寝かせ、冷蔵庫から牛乳を取り出して途中で買ってきた哺乳ビンに入れていた。哺乳ビンを見て爺さんは吃驚して起き上がってきた。
「おい婆さん、何をしとんね。ほんまに子供が出来たんか。お前正気か!」
「ほんまやで、女の子や。ほれっ可愛いでしょう」
婆さんは子犬を差し出した。
「何だ、犬か。吃驚させるなよ」
婆さんは子犬に哺乳ビンを銜えさせた。子犬は可愛い口でスパスパと吸い出した。
「まあ、可愛いわね」
婆さんは安心したようにホット息を継いで、子犬を爺さんに渡しながら惚けて云った。
「あんた私が他所の男と子供作ったと思ったんでしょう」
「アホぬかせ!誰が梅干婆さんを相手にするか」
「そんな事ないよ。オッパイだって未だ立派だよ」
婆さんは服を掻き上げて随分と糸瓜のように垂れ下がったオッパイを見せびらかした。
「お前なあアホな事せんと、その太鼓腹何とかせいよ。乳より膨れてるやないか」
「アホくさ。見せるんじゃなかった。私もウォーキングで腹引っ込めるからあんたもこの子連れて散歩しいや。寝たきりになったらお互い困るんよ」
「ああ、分かったよ。それにしてもこの犬何処で貰って来たんだ」
「公園に捨てられていたのよ。可哀想に……」
婆さんは再び泣きながら事情を説明した。
「そうか、可愛そうな事したな。この子だけでも長生きさせてやらんとなあ」
子犬は満腹になり、眠くなったのかグニャリとなった。
「可哀想に疲れているんや。少し寝かせてやろう」
婆さんはタオルを何枚も敷き重ねて子犬を寝かせてやった。子犬は顎たんを前に突き出しアンパンを踏み潰したような格好で気持良さそうにスースーと寝息を立て始めた。老夫婦は飽きることなく何時までも見つめていた。
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