ラッキーとあいつと妻(13)
ラッキーは目をしょぼつかせて久しぶりに深い眠りに落ちていった。草むらで母親に甘えて乳房に吸い付こうとすると母親は邪険に払いのけ、ゆっくりと立ち上がり立ち去ろうとした。ラッキーが追いかけようとすると母親は振り向きウウッとラッキーを睨んだ。尚も追っかけようとしたが、
<お前はもう私の子じゃない着いてくるな。早く帰れ>
と言わぬばかりに素知らぬ振りをして何処かへ立ち去った。ラッキーは仕方なく兄にじゃれ付こうとしたが兄はひょいと身を交わす。何度も飛び掛ろうとするが忍者のようにスッと消えて居なくなる。パッと現われたと思うと煙のようにスッと消える。
<兄ちゃんラッキーだよ。兄ちゃん、兄ちゃん!>
自分の泣き叫ぶ声でラッキーは夢から覚めた。慌てて小屋から飛び出し悪夢を追い払うようにぶるぶると身震いをしてキョトンと周囲を見渡した。母も兄も居ない。ラッキーは仕方なく犬小屋に潜った。
あいつはラッキーが少し懐いたと見たのか得意そうに散歩に連れ出した。公園の運動場の真ん中で追っかけごっこをして遊ぼうとして、子犬だからと甘く見てリードを放しやがった。その一瞬にラッキーは公園を駆け抜け、車が行き交う道路を突っ走り工場跡地へと遁走してやった。あいつは
「危ない!止まれ!危ない!」
大声で叫びながら息を切らし必死の形相で追いかけて来た。生憎母も兄も何処かへ出かけたらしく助けを求めたが誰も居なかった。路地の隅に追いやられとうとう捕まってしまった。<キャンキャン>と大声で助けを求めたら食堂の小父さんが飛び出して来た。
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